ある投稿から思ったこと(2)
11月5日付朝日新聞の「声」欄に、以下のような投稿が掲載されました。投稿者は東京都在住の58歳の女性。前記事で紹介した投稿を受けてのものです。
明細不明の監督人制度に不信感
「成年後見人に監督人つけよとは」(10月22日)に同感です。私も認知症になった母の成年後見人になった際、裁判所の判断で監督人が付けられました。後見人による財産着服もあり、監督人を付ける趣旨は理解しているつもりですが、異議を申し立てることもできないことに違和感を持ちました。
後見人となって8カ月足らずで母が亡くなると、裁判所が決めた監督料として約80万円の請求を受けました。予想の4倍もの額だったので、裁判所に明細書を求めたところ、担当の返答が「明細はなく、異議があるなら裁判に訴えるしかない」といった趣旨だったことにも納得がゆきません。
監督人は突然の指名なので、当然のことながら面識もありません。それなのに、通帳のコピーまで添えて全財産を見せなければなりません。加えて、母の所持金での買い物は全てレシートをノートに貼って管理し、収支を監督人に報告せよとの指示でした。
煩雑な事務作業をしたあげく、8カ月間で最大の出費が母の財産を守ると銘打った監督人への支払いでした。それも明細不明のままという結果に、監督人を付ける制度への不信を拭えずにいます。
この投稿を読んで疑問に思ったのは、後見人(投稿者)と監督人の間でどのようなコミュニケーションがあったのかということです。記事からは、8カ月の間、一度も顔を合わせる機会がなかったようにも読めます。そうだとしたら、監督人の姿勢に疑問を持たざるを得ません。
監督人の報酬は確かに高額ですが、何らかの理由があってこの額になったのでしょう。問題は、報酬額の多寡ではなく、後見人がそれに納得していないことです。監督人は、報酬額が高額になるであろうことについて、その理由を後見人に説明していないのでしょうか。
親族後見人が見ず知らずの監督人に警戒心を抱くのはやむを得ないことです。親族後見人に対しては、監督人の側からコミュニケーションを図り、制度の趣旨や後見人の報告義務について丁寧に説明し、理解を得るべきでしょう。
新聞に投稿記事が載ることが、世間の空気をどの程度反映しているものなのか、あるいは逆に世論に対してどの程度の影響を与えるものなのかはわかりませんが、監督人制度に対する不満や不信が制度全体に波及し、後見の申立てを躊躇するような風潮になることを心配しています。