知的障碍者や精神障碍者が当事者となって任意後見契約を締結することは可能でしょうか。もし可能だとしたら、任意後見というスキームを活用して、ご本人の意思を尊重した、柔軟な支援体制を構築することができるかもしれません。

現在の成年後見制度を立案した担当者たちは、障碍者本人が任意後見契約を締結することを視野に入れていたようです。

小林昭彦・大鷹一郎・大門匡編「一問一答 新しい成年後見制度」(商事法務、初版2000年、新版2006年)という書籍があります。この本は「新しい成年後見制度と遺言制度について、その立案に関与した法務省民事局および最高裁判所事務総局家庭局の担当者が一問一答の形式で解説」したもの(初版はしがきより)です。

その新版172ページに以下のような記述があります。

(Q93)
「親なき後」の知的障害者・精神障害者等の保護のために任意後見制度を活用することはできますか。

(A)
知的障害者・精神障害者等の「親なき後」(親の老後・死後)の保護のために任意後見契約を活用する方法としては、次のような方法が考えられます。

第一に、子(知的障害者・精神障害者等)本人は、意思能力がある限り、自ら任意後見契約を締結することができ、親の老後・死後に任意後見受任者が任意後見監督人の選任を申し立てることにより、任意後見人による保護を受けることができます。未成年の子も、親権者の同意を得て自ら任意後見契約を締結することができます。

また、子本人に意思能力がない場合でも、子本人が未成年の間に、親が親権に基づいて、子に代わって任意後見契約を締結することも可能です。

第二に、親自身の老後の財産管理等に関して、親が自己を当事者とする任意後見契約を締結するとともに、個々の事案に応じて、①遺言執行者(注)と遺産の管理方法を指定する遺言、②親の死後の財産管理を受託者に委託する信託、③親の死後における子の介護等の事実行為を第三者に委託する準委任契約等を適宜組み合わせることにより、親の老後・死後における子の保護およびそのための財産管理等の在り方をあらかじめ定めておくことが可能です。

(注)事務処理の連続性の観点から、任意後見人と同じ人を遺言執行者に指定する方法も考えられます。任意後見人と同様、法人や複数の人を遺言執行者に指定することも可能です。

意思能力(行為の結果を弁識する能力)があれば、障碍者本人が任意後見契約を締結することができるとしています。契約の細かいところまでは理解できなくとも、財産管理や身上保護の基本的な部分について認識できれば、契約の締結は可能ということでしょう。実際に障碍者本人が任意後見契約を締結した例もあるようです。

協力してくれる公証役場はあまり多くないかもしれません。また、家族や支援者の誘導によって、本人の希望とはそぐわない形になってしまうリスクに留意する必要はありますが、私たち専門職としては、「障碍者に任意後見は無理」と初めからあきらめてしまうのではなく、任意後見の可能性についても視野に入れて相談に応じたり助言をする等の対応が求められるところでしょう。

 

足立区社会福祉協議会 寄附のご案内

日本財団「災害復興支援特別基金」

あしなが育英会「東北レインボーハウス(仮称)」建設募金

日本赤十字社「平成30年7月豪雨災害義援金」