成年後見制度利用促進法に対する附帯決議

成年後見制度利用促進法は、参議院では4月5日の内閣委員会で審議されましたが、採決に当たり、以下の附帯決議が付されました。

成年後見制度の利用の促進に関する法律案に対する附帯決議

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一、障害者の権利に関する条約第十二条の趣旨に鑑み、成年被後見人等の自己決定権が最大限尊重されるよう現状の問題点の把握に努め、それに基づき、必要な社会環境の整備等について検討を行うこと。

二、成年後見人等の事務の監督体制を強化し、成年後見人等による不正行為の防止をより実効的に行うため、家庭裁判所、関係行政機関及び地方公共団体における必要な人的体制の整備その他の必要な措置を十分に講ずること。

右決議する。

利用促進法に対しては、障がい者団体などから慎重論が寄せられていました。現行の成年後見制度、特に後見類型が障害者権利条約に抵触する可能性があること、現に後見類型において本人の意思を踏まえない代理行為等が行われている事例があること等が理由として挙げられています。今必要なのは制度の利用促進ではなく抜本的な改革であること等を理由に、採決では反対に回った会派もありました。

家庭裁判所を批判する声も上がっています。この日の委員会審議では、当事者の声として「裁判所自身の人員不足と後見人選任の責任、後見監督の責任を回避するために、個々の状況を精査しないまま、後見支援信託か第三者監督人選択という外部委託を強制して、真面目な親族後見人の邪魔をしないでください。本人の財産から無駄な支出をさせないでください。」という厳しい意見が紹介されました。

附帯決議は、このような慎重論や批判に配慮してなされたものであると思われます。

ところで、今回の成年後見関連2法の審議は、衆参両院とも法務委員会ではなく、内閣委員会で行われました。そして、少なくとも委員会審議においては、裁判所当局は「蚊帳の外」でした。このことを批判する意見もありますが、裏返せば裁判所に対する不信感のあらわれとも言えるでしょう。さきにご紹介した当事者の声は、恐らく裁判所にとっては不本意でしょうが、十分に耳を傾けるべきものであると私は考えます。

なお、こうした状況を踏まえてのものかどうかはわかりませんが、裁判所の姿勢も変化してきているようです。具体的にどう変わってきたかについては稿を改めます。

※参考
障害者の権利に関する条約第12条(法律の前にひとしく認められる権利)
1 締約国は、障害者が全ての場所において法律の前に人として認められる権利を有することを再確認する。
2 締約国は、障害者が生活のあらゆる側面において他の者との平等を基礎として法的能力を享有することを認める。
3 締約国は、障害者がその法的能力の行使に当たって必要とする支援を利用する機会を提供するための適当な措置をとる。
4 締約国は、法的能力の行使に関連する全ての措置において、濫用を防止するための適当かつ効果的な保障を国際人権法に従って定めることを確保する。当該保障は、法的能力の行使に関連する措置が、障害者の権利、意思及び選好を尊重すること、利益相反を生じさせず、及び不当な影響を及ぼさないこと、障害者の状況に応じ、かつ、適合すること、可能な限り短い期間に適用されること並びに権限のある、独立の、かつ、公平な当局又は司法機関による定期的な審査の対象となることを確保するものとする。当該保障は、当該措置が障害者の権利及び利益に及ぼす影響の程度に応じたものとする。
5 締約国は、この条の規定に従うことを条件として、障害者が財産を所有し、又は相続し、自己の会計を管理し、及び銀行貸付け、抵当その他の形態の金融上の信用を利用する均等な機会を有することについての平等の権利を確保するための全ての適当かつ効果的な措置をとるものとし、障害者がその財産を恣意的に奪われないことを確保する。

 

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