成年後見人による死後事務(承前)

3月24日の衆議院本会議で可決され、参議院で審議中の「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案」では、民法の改正として次の条文が追加されることになっています。

(成年被後見人の死亡後の成年後見人の権限)
第八百七十三条の二 成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)

この規定により、亡くなった被後見人の火葬を後見人が行うことができるようになるのですが、それでは、火葬後の遺骨(焼骨)をお墓に納めることができるかというと、これはまた別の問題になってきます。

条文では「火葬又は埋葬に関する契約」となっていますが、ここでいう「埋葬」とは「死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む)を土中に葬ること」(墓地、埋葬等に関する法律2条1項)、すなわち土葬であって、火葬後の遺骨を墓に納める行為(納骨)は「焼骨の埋蔵」(同4項)という全く別の概念となります。

条文を素直に読めば、後見人は焼骨を埋蔵するための契約はできません。遺骨は相続財産ではない(判例)ので、「相続財産の保存に必要な行為」として何らかの行為をすることもできません。

したがって、後見人が永代供養墓等を契約し、本人の財産から使用料を支出して納骨することはできないということになります。また、本人が生前にお墓を用意していた場合でも、そこに後見人の判断のみで納骨することは、祭祀承継者との関係で問題が生じかねないので、慎重にならざるを得ないでしょう。

結局のところ、遺骨は後見人自身が預かるか、無償で預かってくれるところを見つけるしかないように思われます。

なお、一部の都営霊園には「一時収蔵施設」というものがあって、最長で5年間遺骨を預かってくれます。使用料も安い(年2,100円)ので、本人の財産から支出することも許容範囲のように思われます(あくまで私見ですが)。しかし、現時点では申込み資格が「遺骨の親族である者(内縁関係を含む)」に限定されていて、第三者後見人が申し込むことはできません。今般の法改正を受けて見直されることを期待しますが‥‥。

 

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