後見と月約献金

タイトルを見て「何のことだろう?」とお思いの方も多かろうと思います。

キリスト教会のメンバーは、毎月一定額を教会に献げます。これを月約献金とか維持献金、月定献金などと呼んでいます。

教会に月約献金をしていた人が認知症などのために判断能力が低下して法定後見が開始したとき、後見人は本人に代わって月約献金を支出することができるのでしょうか。

東京家裁が後見人向けに出しているパンフレットには、被後見人等の財産から支出できるものとして、本人の生活費や後見事務費のほかに、「親族や親しい友人の慶弔の際に、常識的な金額の範囲内で支払う香典や祝儀等については、被後見人の財産の中から支出してもよいと思われる場合がある」という記述があります。

ここから読み取れるのは、裁判所が妥当なものとして想定しているのは、あくまでも一時的な支出にとどまるということでしょう。

後見人だけの判断で月約献金を支出すれば、定期報告時に家裁や監督人のチェックが入ることは避けられないでしょうし、事前に相談すれば「それは認められません」とストップをかけられる可能性が高いと思われます。

判断能力が低下した後も月約献金はきちんと続けたい――そのようにお考えであれば、元気なうちにしかるべき人と任意後見契約を締結し、所属教会への月約献金の支出を任意後見人の仕事として契約書に明記しておくことが最も確実でしょう。

次善の策としては、後見等が開始した後も月約献金の支出は継続してもらいたい旨を記載した書面を公証役場に持参し認証を得ておけば(私文書認証)、家裁や監督人が本人の意思を尊重して支出を認めてくれる可能性は高いと思われます。

公証人の認証はなくても、書面化してあれば認めてもらえるかもしれませんが、念のため認証は得ておいた方がよいと思います。逆に、親族や牧師などに口頭で意思を伝えただけでは、月約献金の支出は認められない可能性が高いと思われます。

書面で意思表示がなされていなくても、過去数年分の献金袋が保管されていたり、所属教会の帳簿などから月約献金がなされていたことを明らかにすることができれば、そのことによって本人の意思を推認することができるので、引き続き認められる可能性があると思われます。

ただし、大多数の家裁書記官や監督人はキリスト教会においてそのような慣習があることを知らないでしょうから、後見人や所属教会が月約献金の意義を説明し、理解を得るというプロセスが必要になってくるでしょう。説明を尽くしても「やっぱりだめです」と言われてしまうリスクもゼロではないと思います。

任意後見契約なり私文書認証で手当てしておくに越したことはないと思われます。

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