後見制度支援信託はよいことずくめではない

8月30日付の日本経済新聞に次のような記事が掲載されました。

成年後見、不正防止へ信託利用広がる 着服減る効果

成年後見人の不正を防ぐために財産を管理する「後見制度支援信託」の利用が広がっている。裁判所の許可がなければまとまった金額を引き出せないため、昨年は前年に比べて後見人が預貯金を着服する不正件数は減少、被害額も半減した。7月には初めて地方銀行でも導入。最高裁は「高齢者の財産を守るため、積極的に使ってほしい」と呼びかけている。

後見制度支援信託では、認知症などで判断能力が十分でない高齢者に代わって親族らが成年後見人として財産を管理する際、現金を銀行に信託する。生活費を定期的に口座に振り込むことはできるが、入院や家の修繕などで数十万~数百万円単位のまとまった額を引き出すには、家裁の指示書が必要となる。家裁が認めなければ、解約もできない。

取り扱いが始まった2012年の件数は98件(約42億円)だったが、全国の家裁が当事者に利用を促したことで次第に広がり、14年は2764件(約1009億円)、昨年は6563件(約2109億円)に増えた。

最高裁は「不正の防止に一定の効果があった」と説明。最高裁がまとめた調査によると、成年後見人らによる着服は14年に831件に上ったが、昨年は521件に減少した。被害額も半減した。

これまでは大手の信託銀行だけが対応していたが、7月末に千葉銀行が地銀で初めて後見制度支援信託の取り扱いを始めた。同行の担当者は「高齢者の財産を守り、後見人の財産管理を支える仕組み。高まる地域のニーズに応えたい」と強調する。

ただ、銀行側の収益につながりにくく、新たなシステム導入の費用が掛かることなどから、地銀が取り扱いを始めるハードルが高いとされる。現時点で、ほかに参入を明らかにしている銀行はない。

信託銀行などでつくる信託協会(東京・千代田)は「導入は金融機関ごとの経営判断に委ねられるが、地銀でも始まったことは歓迎したい。さらに制度の周知を進めていく」と説明している。

記事では後見制度支援信託の成果やメリットばかりが強調されていますが、この制度、決してよいことずくめではありません。

最大の問題は、裁判所によるお仕着せであり、にもかかわらず本人の財産から少なくない支出を強いられることです。

個々の案件について信託を使うかどうかを決めるのは裁判所で、親族後見人(候補者)に拒否権は事実上ありません。信託を使うとなると、専門職後見人(弁護士か司法書士)が選任されて手続を進めるという流れです。信託への財産の移動が終われば専門職後見人は辞任しますが、当然報酬は発生し、本人の財産から支払うことになります。報酬額は十数万円から20万円程度。決して安い金額ではありません。納得できない親族後見人がいても当然でしょう。

記事には「銀行側の収益につながりにくく」云々という記述がありますが、この「金融商品」は、顧客が自由意思で購入するのではなく、むしろ不本意ながら買わされる側面が強いものです。私に言わせれば、銀行の収益という観点から論じること自体が間違っています。

 

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