相続税対策で思うこと

ことしの1月1日から相続税制が変更され、基礎控除額が大幅に圧縮されました。地価が高い東京都内に限っていえば、相続税の課税対象者が20%になるという民間機関の予測もあり、多くの人にとって相続税が現実の問題となることは確実な状況です。

このことを受けて、さまざまな相続税対策が喧伝されています。「賃貸アパート・マンションを建てて相続税を節税しましょう」というのもその一つです。

賃貸住宅を建設すると土地の評価額を下げることができますし、金融機関から融資を受ければ資産全体を圧縮する効果がありますから、これが有力な相続税対策であることには疑問の余地はありません。

しかし、賃貸住宅の経営は、暮らしの基盤である「住」を提供するものですから、単なるビジネスにとどまるものではなく、ある種の社会的責任を伴います。一たん始めれば、簡単に商売替えというわけにはいきません。

そして、建物の維持管理には手間と費用がかかります。しかも、築年数を経るにつれて維持管理のコストは増えていきます。建物が新しいうちは、そのこと自体が付加価値となりますが、10年もたてばそれを売りにすることはできなくなります。

賃貸住宅市場はマクロで見れば供給過剰です。「新築」に代わる新たな付加価値を提供しなければ、借り手はなかなか関心を示してくれません。設備の更新や維持管理を怠って物件の魅力が下がれば、入居者はあっさりと他の物件へ移ってしまい、空室はなかなか埋まらなくなります。

空室が増える→家賃収入が減り、リフォームやメンテナンスの費用が捻出できない→物件の魅力がさらに下がる→空室が埋まらないという悪循環に陥れば、相続税対策で建てた賃貸住宅は、文字どおり「負の遺産」になってしまいます。

また、賃貸住宅の経営は、入居者との関係で何かと煩わしい思いをするものでもあります。借り手の保護に手厚い借地借家法は、優良な店子にも不良借り主にも平等に適用されるのです。

さまざまな要素を考慮した上で始めるのならいいのですが、相続税対策という観点のみで賃貸住宅の経営に踏み出すことには、私は疑問を感じています。

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