成年後見と賠償責任

前記事の続きです。

前記事では「ヒルフェ正会員は、成年後見等業務に係る責任賠償保険にヒルフェを通じて加入しています」とさらりと書きましたが、これは実は極めて大切なポイントです。

「行政書士賠償責任補償制度」という賠償責任保険があります。この保険は「行政書士、補助者およびその他使用人が、日本国内において行政書士の業務を遂行するにあたり、職業上相当な注意を用いなかったことに基づいてなされた損害賠償請求について、行政書士が法律上の賠償責任を負担することによって被る損害を補償する制度」(パンフレットより引用、下線は筆者による)です。

この保険において補償の対象となる「行政書士の業務」とは、原則として、行政書士法第1条の2及び第1条の3に規定する業務と、これらに附帯または密接に関連する業務です。

成年後見業務は、行政書士の法定業務ではありません。したがって、行政書士が成年後見業務の遂行中に負った賠償責任については、この保険を使うことができないのです。

認知症で徘徊傾向のある老人が線路に入り込み、列車にはねられて死亡した事故で、鉄道会社が家族に対し損害賠償を請求し、裁判所がこれを認めたことが大きなニュースとなりました。

同様の事態を成年被後見人が引き起こしたとしたら、損害賠償責任は成年後見人が負うことになります(民法713条及び714条)。後見人の責任はそれほどに重いということです。

※2016年3月1日の最高裁判決で損害賠償請求が棄却され、また、「成年後見人であることだけでは直ちに法定の監督義務者に該当するということはできない」という判断が示されました。判決を受け、記事の一部を削除します。(2016年9月14日追記)

ヒルフェ(もしくはコスモス)に加入していない行政書士が成年後見業務を行い、万が一損害賠償責任を負うような事態になったらどうするのでしょうか。

私は、ヒルフェ(コスモス)に加入せずに成年後見業務を行うことは、任意保険に加入せずに自動車を運転することと等しいぐらい無謀かつ無責任な振る舞いだと思っています。

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