成年被後見人の選挙権喪失は違憲-東京地裁判決

成年被後見人は選挙権を有しないとした公職選挙法11条1項1号の規定は違憲であるとの判断を東京地裁が示しました。

――以下引用――
成年後見制度:選挙権喪失は違憲 東京地裁判決
毎日新聞 2013年03月14日

成年後見人が付くと選挙権を失う公職選挙法の規定は法の下の平等などを保障した憲法に反するとして、ダウン症で知的障害がある茨城県牛久市の名児耶匠(なごや・たくみ)さん(50)が国に選挙権があることの確認を求めた訴訟で、東京地裁は14日、この規定を憲法に違反すると判断し、訴えを認める判決を言い渡した。同様の訴訟はさいたま、京都、札幌の各地裁で起こされており、今回が初の司法判断。

定塚(じょうづか)誠裁判長は「選挙権を制限するやむを得ない理由があるとは認められない」と述べ、名児耶さんに対し「どうぞ選挙権を行使して社会に参加してください」などと語り掛けた。

判決が確定すれば名児耶さんは投票できるようになる。違憲を解消するには公選法の改正が求められることから、昨年末の時点で成年後見人が付いている成年被後見人約13万6000人(最高裁調べ)の選挙権にも影響を与える可能性がある。

判決は、在外邦人の投票を制限する公選法の規定を違憲とした最高裁大法廷判決(05年9月)を引用。今回問題となった規定が「公正を確保しつつ投票を認めることが事実上不能か著しく困難で、選挙権の制限がやむを得ない場合」に当たるかどうかを判断した。

投票には「物事の道理を理解する能力が必要」としたが、「成年後見人を付ける際に審判で判断される財産の管理能力と、投票能力は明らかに異なる」と指摘。「成年後見人が付いても投票能力のある人は少なからずいる」とした。

国側は「投票能力を個別審査する制度の創設は不可能で、成年後見制度を借用せざるを得ない」と主張したが、判決は「運用に困難が伴うからといって、一律に選挙権を奪うことが『やむを得ない』とはいえない」と批判した。

さらに、障害者の自己決定を尊重し、通常の生活をする社会を作る「ノーマライゼーション」という成年後見制度の理念を重視。同様の理念に基づいて欧米で法改正が進んでいることに触れ「選挙権を奪うことは制度の趣旨に反し、国際的な潮流にも反する」と述べた。【鈴木一生】
――引用ここまで――

「事理弁識能力を欠く常況にある」成年被後見人のうち、実際問題としてどれぐらいの割合の人が自らの意思で選挙権を行使できる状況にあるかはわかりませんが、知的障碍や精神障碍を理由に後見人がついている人の中には、そういう人が相当数いるようにも思えます。

民法においては成年被後見人でも婚姻・離婚・養子縁組・離縁といった身分行為は単独でできるわけですから、公選法が被後見人の選挙権を一律に奪っているのは、バランスを欠くと批判されてもやむを得ないかなと思います。もともと公選法は「べからず法」と言われるくらい「あれもだめ、これもだめ」という法律ですから、そういう面がここにも出ていたと見ることもできるでしょう。

もっとも、裁判所は判決を出せばそれで終わりですが、実際に選挙を執行する側である行政からすれば、クリアしなければならない課題が山のように出てきます。「投票能力を個別審査する制度の創設は不可能で、成年後見制度を借用せざるを得ない」と言いたくなる気持ちはわからないでもないのです。これについては稿を改めることとします。

 

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