マタチッチのブル8
土曜日にN響定期公演に行ってきました。エド・デ・ワールトの指揮で、プログラムはブルックナーの交響曲第8番(ノヴァーク版)。なかなかいい演奏でした。
しかし、N響のブル8といえば、何といってもマタチッチでしょう。強烈な体験でした。1984年3月、N響名誉指揮者のロヴロ・フォン・マタチッチが最後に来日したときの演奏です。
このときは、これが最後の来日になるというのが聴衆の間で一種暗黙の了解になっていて、会場は異様な空気に包まれていました。
演奏も凄かったです。金管やティンパニを目いっぱい鳴らし、速いテンポでぐいぐいと突き進んでいく、迫力満点の演奏でした。団員も相当気合いが入っていたようです。勢い余ってコンサートマスターが弦を切ってしまうという場面もありました。(このとき、隣の奏者とすばやく楽器を交換するというプロの技を見ることができました)
後日、そのときの放送録音がCD化され、改めて聴き直しましたが、結構きずも多いし、目いっぱい働かされた金管群は、第4楽章になると明らかに疲れていて、音が出ていない。要するに技術的には問題の多い演奏なのですが、あの日の演奏は、そのような技術的な問題を超越した、記念碑的な演奏と言えるものでしょう。
当日は、団員が引き上げた後も拍手が鳴りやまず、あたかも別れを惜しむかのように、何回もマタチッチを舞台に呼び戻していました。この日だけでなく、他の公演も同様だったようです。団員が引き上げた後も拍手が続くなんて、N響定期ではめったにないことです。
マタチッチはこの公演の翌年に亡くなりました。最後の来演を聴くことのできた私はラッキーでした。N響の演奏は随分聴いていますが、マタチッチのブル8が私の中ではベストワンです。これを超える演奏に巡り会うことはないでしょう、たぶん。
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