遺言で死亡保険金の受取人を変更する場合の文例を教えてください。

【文例】
 遺言者は、下記の生命保険契約に基づく死亡保険金の受取人を長男甲野太郎(昭和××年×月×日生)に変更する。

保険証券番号 AB-12345678
契約日    平成22年5月5日
種類     一時払終身保険
保険金額   1,000万円
保険者    XYZ生命保険株式会社
契約者    遺言者
被保険者   遺言者
受取人    甲野花子(遺言者の妻、昭和××年×月×日生)

<ポイント>
 平成22年4月1日に施行された保険法では、遺言によって保険金受取人を変更することができる旨を定めています(44条1項)。ただし、遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができません(同条2項)。したがって、通知を受ける前に保険会社が変更前の受取人に保険金を支払ってしまった場合、遺言によって新たに指定された受取人は、保険会社に対して保険金の支払いを請求することはできません。また、保険契約者と被保険者が異なる場合、死亡保険契約の保険金受取人の変更は、被保険者の同意がなければ、その効力を生じません(45条)。

 遺言による保険金受取人の変更は、「保険契約者の相続人」がその旨を保険会社に通知する必要がありますが、遺言執行者を指定しておけば、遺言執行者は相続人の代理人とみなされますから(民法1015条)、遺言執行者が保険会社に通知すればよいことになります。

 保険法の施行前に締結された保険契約については、上記の保険法の規定は適用されません(保険法附則4条)。遺言による保険金受取人の変更が可能かどうかは、あらかじめ保険会社に確認しておいた方がよいでしょう。

 また、多くの保険会社が、死亡保険契約締結時の保険金受取人を配偶者及び2親等内の血族に限定しています。遺言によってこれ以外の親族や第三者へ受取人を変更したい場合も、事前に保険会社に確認をとっておいた方がよいと思われます。

 なお、共済(こくみん共済、都道府県民共済)については、死亡共済金受取人の範囲と順位は約款であらかじめ定められており、こくみん共済においては遺言によって死亡共済金受取人を指定(変更)することができますが、都道府県民共済では遺言によって受取人を指定(変更)することはできません。