認知症と診断されてから一人で書いた遺言書に効力はありますか。

 遺言をする能力(遺言能力)について、民法は、15歳に達した者は遺言をすることができる旨を定めているだけで、認知症の患者を一律に排除するような規定はありません。

 したがって、認知症患者の遺言については、遺言能力の有無や遺言者の真意に基づくものであるのか(他者に誘導されていないか)等について、個別具体的に判断することになります。

 実際に、認知症初期の方が遺言書の作成を希望される事例は少なくありません。このような場合、後のトラブルを防止するために、遺言能力があることについて医師の診断書を得た上で、公正証書遺言を作成されるとよいでしょう。

 ちなみに、成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復したときにおいて遺言をする場合は、医師2人以上が立ち会い、そのときに遺言者が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記し、署名押印することが定められています(民法973条)。被保佐人と被補助人については、このような規定はありません。