自筆証書遺言について教えてください。

 自筆証書遺言とは、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、押印した遺言書です。

<メリット>
・思い立ったときに手軽に作成することができます。
・遺言の撤回(破り捨てればよい)や変更(改めて書き直せばよい)が簡単にできます。
・すべてを自分で書けば費用もかかりません。
・遺言した内容を秘密にしておくことができます。

<デメリット>
・方式の不備により遺言が無効になるおそれがあります。
・内容があいまいだったり、遺留分を侵害していたりすると、かえって相続がスムーズに進まなくなるおそれがあります。
・遺言書を見つけてもらえなかったり、悪意ある相続人が隠匿や変造をするおそれがあります。
・全文を自分の手で書く必要がありますから、病気などで字が書けない状態にあるときには自筆証書遺言を作成することはできません。
・遺言者の死後、家庭裁判所による検認の手続を経る必要があります。

<注意点>
・遺言書の全文を自分の手で書かなければなりません。代筆は認められていません。また、パソコンやワープロで入力し印字したものは無効です。
・日付は、遺言書を作成した日が明確にわかるものでなければなりません。「平成26年4月吉日」という記載は無効です(判例)。
・押印には実印を用い、遺言者の印鑑登録証明書を添付しておくことをおすすめしますが、認印でも有効です。
・遺言書に封印をすると、検認のときまで開封できなくなります(家庭裁判所外で開封すると5万円以下の過料に処せられることがあります)。遺言書に葬儀や埋葬に関する希望を記載しても、遺族は葬儀の前に見ることができません。葬儀や埋葬に関する希望を書面にするときは、遺言書とは別の封筒に入れ、家族や近しい人に預けておくのがいいでしょう。

 自筆証書遺言は、メリットに比べてデメリットが大きいことから、あまりおすすめできるものではありません。公正証書遺言を作成するまでのつなぎとして利用する程度にとどめておいた方がよいでしょう。

 さまざまな事情により、どうしても自筆証書で遺言を残しておきたいという場合は、(1)文案そのものを専門家に作成してもらうか、文案を自分で作成した後に専門家にチェックしてもらう。(2)推定相続人以外の第三者(できれば専門家)を遺言執行者に指定し、遺言執行者に遺言を預けておく――ことをおすすめします。

 文案について専門家に関与してもらえば、方式不備による無効や内容のあいまいさによるトラブルを防ぐことができます。

 また、第三者(専門家)を遺言執行者に指定し、遺言書を預けておけば、紛失や隠匿・変造を防ぐことができます。また、相続開始後、遺言執行者が遺言書の保管者の立場で検認の申立てをすることができますから、煩雑な検認手続を専門家に任せることができます。

(注)2018年(平成30年)3月、自筆証書遺言の要件を一部緩和すること等を内容とする民法の改正案が国会に提出され、審議中です。