私は長い間母の介護をしてきました。兄と弟は全く手伝わなかったのに、母が亡くなると相続の権利を主張してきました。家だけでも自分のものにすることはできますか。

共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法によって、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時点で有していた財産の価額からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、寄与分がある者の相続分は、相続財産額に相続割合を乗じた結果に寄与分を加えた額となります。

例えば、相続人が3人いて、相続開始時の財産価額が7,000万円、ある相続人の寄与分が1,000万円と評価されるとすると、相続財産額は7,000万円から寄与分の1,000万円を控除した6,000万円となります。そして、法定相続分に応じて遺産分割を行う場合、寄与分がある者の相続分は、6,000万円の3分の1である2,000万円に1,000万円を加えた3,000万円となります。

寄与分は共同相続人の協議で定めますが、協議がまとまらないときやできないときは、家庭裁判所は寄与をした者の請求によって、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して寄与分を定めるものとされています。

寄与分を金銭的に評価することは難しく、家庭裁判所の調停や審判においても、寄与をした者の主張どおりには認められにくいのが実情です。また、寄与分が認められるのは共同相続人のみです。

なお、2019年7月に施行された民法改正により、妻が夫の親の介護に努めたなど、相続人でない被相続人の親族が特別の寄与をした場合、相続人に対し特別寄与料の支払いを求めることもできるようになりました。→詳しくはこちら