成年後見制度を利用したいのですが、具体的にどのような手続が必要ですか。また、手続に要する費用はどれくらいでしょうか。

手続の流れ

○法定後見の場合

(1)申立てに必要な書類を準備します。申立書と診断書(成年後見用)の用紙は、家庭裁判所から取り寄せるか、裁判所のウェブサイトからダウンロードします。
 成年後見用の診断書は主治医に作成してもらいます。また、本人の戸籍謄本などの添付書類も必要となります。

(2)書類が準備できたら、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。東京家裁のように予約制をとっているところもありますので、あらかじめ電話で確認した方がよいでしょう。

(3)家庭裁判所は、申立てを受理した後、調査を行います。主な内容は、申立人・後見人候補者・本人との面接、親族への意向照会などです。
 本人の判断能力がどのくらいあるかを医学的に判定するため、鑑定が行われることもあります。

(4)調査・鑑定が終わると、家庭裁判所は後見等開始の審判を行います。成年後見人は家庭裁判所が選任します。申立ての際に希望した候補者以外の人(専門職や法人)が選ばれることもあります。

(5)審判が確定し、登記が完了すると、成年後見人の仕事が始まります。

○任意後見の場合

(1)本人と任意後見受任者との間で任意後見契約を結びます。任意後見契約は、任意後見契約に関する法律により、公正証書でしなければならないことになっています。

(2)本人の判断能力が低下したとき、本人、配偶者、4親等内の親族または任意後見受任者が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てます。

(3)任意後見監督人が選任されると、契約の効力が発生し、任意後見人による支援が始まります。

費用について

○法定後見の場合

・申立てに必要な費用は、収入印紙・切手代等で約8,000円です。このほかに、戸籍謄本等の発行手数料、成年後見用診断書の作成費用(3,000円~1万円程度)が必要となります。
・鑑定が行われる場合、別途鑑定費用が必要となります(5万円~10万円程度)。
・申立てに要する費用は申立人が負担するのが原則ですが、家庭裁判所の許可を得て、本人の財産の中から手続費用の償還を求めることができます。
・成年後見人に対する報酬額は家庭裁判所が決定し、本人の財産の中から支払われます。

○任意後見の場合

・任意後見契約公正証書の作成費用は、公証役場の手数料、印紙代等で約2万円かかります。
・任意後見人に対する報酬は、本人と任意後見人との契約によって決まります。
・任意後見監督人に対する報酬額は家庭裁判所が決定し、本人の財産の中から支払われます。

執筆者
行政書士・社会福祉士 稲吉 務
(足立区の専門職成年後見人)