以前の禁治産・準禁治産制度と成年後見制度の違いは何ですか。

 旧来の禁治産・準禁治産制度では、「取引の安全」と言われるものが最も重視されていて、判断能力が不十分な方を支援するというよりは、そういった方々を契約社会の枠外に置く色彩が強い仕組みになっていました。

 禁治産者、準禁治産者の宣告を受けるとその旨が戸籍に記載されていたのは、そうした考え方に基づくものです。以前は自由に戸籍を閲覧したり謄本を取ることができましたから、その人が禁治産者や準禁治産者であるかどうかを第三者が知ることができ、禁治産者・準禁治産者と直接取引するのを控えることもできたわけです。

 新しい成年後見制度では、そのような考え方を根本的に改め、判断能力が不十分な方を排除するのではなく、なるべく自らの意思で決定できるように適切な支援をすることを目的としています。

執筆者
行政書士・社会福祉士 稲吉 務
(足立区の専門職成年後見人)