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1-35 戸籍について(4)

戸籍を請求しても出してもらえない場合があると聞きました。どんな場合でしょうか。

 幾つかのケースが考えられます。

 一つは、保存期間を過ぎて処分されている場合です。除籍簿や改製原戸籍の保存期間は、平成22年までは80年でした(現在は150年。戸籍法施行規則5条、10条の2)。したがって、相続手続等で古い除籍謄本を請求すると、「保存期間を過ぎて処分したため、謄本を交付することはできません」という回答が返ってくることがあります。

 もっとも、保存期間を過ぎたものがすべて処分されてしまっているかというと、そういうわけではありません。自治体によっては、保存期間を過ぎた古い除籍簿なども保管していて、請求により謄本等を交付してくれるところもあります。コンピューター化に伴って除籍簿等の磁気ディスク化が行われたところでは、保存期間を過ぎたものでも保管しておく傾向があるようです。

 もう一つは、戦災等で戸籍簿が失われてしまっている場合です。第2次大戦中の空襲で大きな被害があった地域(東京都墨田区など)で除籍謄本を請求すると、「該当する謄本が見当たりません」という返事とともに、「上記の除籍簿および東京法務局に保管中の副本は、昭和20年3月10日に戦災で焼失しました。このために再製することができないので、除籍の謄(抄)本は、交付できません。」と記した「告知書」が渡されることがあります。

 なお、平成23年3月11日の東日本大震災で滅失した4自治体(宮城県南三陸町、同女川町、岩手県陸前高田市、同大槌町)の戸籍の正本については、管轄法務局で保存していた戸籍の副本等に基づいて再製作業が行われ、既に完了しています。

 このほか、弊所が取り扱った事例では、被請求者の本籍が樺太にあったというものがあります。北緯50度以南の南樺太は、1905年から1945年まで日本の領土でしたから、ここに本籍を置くこともできました。樺太の戸籍簿は戦乱によってほとんどが失われ、現在は外務省にごく一部が保管されています。これについては請求により謄本が交付されます。保管されていないものについては、請求により保管していない旨の証明が交付されます。

 また、北方領土の戸籍簿については、一部が釧路地方法務局根室支局で保管されており、請求により謄本を交付してもらえるようです。

相続・遺言・成年後見Q&A

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