「戸籍事務のコンピューター化」とはどういうことでしょうか。具体的に教えてください。

 平成6年に戸籍法が改正され、それまでは紙ベースで管理されていた戸籍簿について、磁気ディスクによる管理もすることができるようになりました。これに伴い、平成7年以降、戸籍事務のコンピューター化が市区町村単位で順次行われています。

 東京都足立区を例にとると、足立区では平成8年5月3日に戸籍事務のコンピューター化が実施されました。これ以降、足立区で新たに編製された戸籍については、初めから磁気ディスクによる管理が行われています。戸籍謄本を請求すると、A4の横書きで印刷された帳票が交付されます。正式には「戸籍全部事項証明」と呼ばれるものです。従来の戸籍抄本に当たるものは「戸籍個人事項証明」と呼ばれるものになっています。

 平成8年5月3日時点で既に編製され、通用していた戸籍については、新たに磁気ディスクによる戸籍簿がつくられ、それまで使われていた紙ベースの戸籍簿は「改製原戸籍」として別立てで管理されています。同様に除籍簿についても、紙ベースによる管理から磁気ディスクによる管理に移行しています。

 ところで、戸籍の改製が行われるとき、従来の戸籍簿に記載されていた事項がすべて引き継がれるわけではありません。改製日の時点で除籍になっていた人は、新しい戸籍には記載されないのです。

 同じく足立区を例にとって、昭和33年に結婚して足立区内に戸籍をつくった夫婦がいて、昭和38年に子供(Aさん)が生まれたとしましょう。Aさんが平成2年に結婚して足立区外に新たに戸籍をつくっていると、平成8年5月3日の改製日時点では除籍となっているので、磁気ディスク化された夫婦の戸籍簿にはAさんの記載は全くありません。戸籍謄本をとると、表面上は子のない夫婦のように見えてしまいます。改製原戸籍謄本を取って初めて、夫婦にはAさんという子がいることがわかるわけです。

 戸籍事務のコンピューター化は市区町村単位で進められています。全体の進捗率は、かなり古いデータですが、平成19年3月時点で約68%という数字が公になっています(第166回国会衆議院法務委員会議録第8号、平成19年3月23日)。

 都市部は早くて地方は遅いとか、そういう傾向のようなものも見て取ることはできません。同じ東京23区でも、足立区は平成8年と比較的早かったのですが、お隣の葛飾区は平成16年です。ウィキペディアには「人口が多いほど費用が掛かるため、政令指定都市は電算化していない場合が多い」という記述がありました。どこまで信用できる記述かわかりませんが、政令指定都市の一つである千葉市で戸籍事務がコンピューター化されたのは平成26年でした。