父が亡くなりました。父名義の預金口座を解約するために銀行へ行ったら、「お父様が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本が必要です」と言われました。「なぜ必要なのか」と尋ねても、窓口の担当者は「そういう決まりになっていますので‥‥」の一点張りです。なぜ生まれてから亡くなるまでの戸籍をそろえる必要があるのでしょうか。

 預貯金や不動産の相続手続を行うに際しては、ほとんどの場合において添付書類として「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類」が求められます。

 これは、相続人の範囲を確定するためです。最新の戸籍謄本を見ただけでは、亡くなった人に子がいるかどうか、いる場合には何人いるかを確かめることはできないのが通例です。例えば、婚姻によって子が除籍となった後に転籍や改製(コンピューター化)によって戸籍がつくり直されると、その子については新しい戸籍に記載されません。被相続人について子の有無と人数を確かめるためには、被相続人が記載されている戸籍を順にさかのぼって見ていかなければなりません。逆にいうと、出生から死亡までのすべての戸籍を見ないと、その人に子がいるかどうか、いる場合には何人いるかを確定することはできないのです。

 したがって、手続をする側(銀行や法務局)としては、正確を期するため、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類を提出してもらい、確認する作業が必要となるわけです。

 法定相続人が被相続人の子である場合は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類をそろえれば済みますが、法定相続人が被相続人の兄弟姉妹となる場合は、兄弟姉妹の人数を確定させるため、被相続人の父母それぞれについても出生から死亡までの連続した戸籍謄本類を用意することが必要となります。

 また、代襲相続(1-9参照)が発生している場合は、代襲者の範囲を確定するため、被相続人に加えて被代襲者についても出生から死亡までの連続した戸籍謄本類をそろえる必要が出てきます。