不動産なのですが、1カ所しかないのに3人で分けるとすれば、売るしかないのでしょうか。

 具体的な遺産分割には、(1)現物分割、(2)代償分割、(3)換価分割という三つの方法があります。

 現物分割とは、目的物を具体的相続分に応じてそのまま分割する方法です。現金3,000万円を3人の相続人が1,000万円ずつ取得するような形です。

 代償分割とは、目的物を特定の相続人が取得し、取得者は他の相続人に具体的相続分に応じた金銭(代償金)などを支払う方法です。3,000万円の不動産をある相続人が取得し、その者が他の2人の相続人に1,000万円ずつ支払うような形です。

 換価分割とは、目的物を売却して換金し、それを分割する方法です。3,000万円の不動産を売却し、3人の相続人が1,000万円ずつ取得するような形です。

 不動産は現物分割にはなじまないので、代償分割か換価分割をすることになります。不動産を受け継ぐ希望があり、かつ代償金を用意できる状況であれば、代償分割をすることになるでしょう。不動産は処分しても構わない、あるいは代償金を用意できないという状況であれば、換価分割を選択することになります。

 なお、不動産を3人で共有するという方法もありますが、一たん共有名義にすると売却することが難しくなり、保有し続けている間に二次相続が発生して当事者が増え、権利関係がさらに複雑になるおそれがあるので、あまりおすすめできる方法ではありません。