兄は借金をし、父親に肩がわりしてもらっていました。父が亡くなったとき、これを相続分から差し引くことはできますか。

 共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けていたり、婚姻や養子縁組に当たり贈与を受けた、あるいは生計の資本として贈与を受けた者(特別受益者)があるときは、被相続人が相続開始の時点で有していた財産の価額にその遺贈または贈与の価額を加えたもの(特別受益の持戻し)を相続財産とみなし、特別受益者の相続分は、相続財産額に相続割合を乗じた結果から遺贈または贈与を受けた価額を差し引いた残額となります。

 例えば、相続人が2人いて、一方が被相続人から生前に2,000万円の贈与を受けており、相続開始時の財産価額が4,000万円だったとすると、相続財産額は4,000万円に贈与分の2,000万円を加えた6,000万円となります。そして、法定相続分に応じて遺産分割を行う場合、特別受益者の相続分は、6,000万円の2分の1である3,000万円から2,000万円を控除した1,000万円となります。

 「生計の資本」に当たるものとしては、開業資金や学費(私立医大の学費や海外留学費用)、不動産購入費用の援助などがあります。借金の肩がわりが「生計の資本としての贈与」に当たるかどうかは微妙なところもありますが、特別受益に当たるとして持戻しを認めた審判例があります(高松家裁丸亀支部審判平成3年11月19日)。