私は独身で、両親は既に他界し、子供も兄弟姉妹もいません。私が亡くなったら、私の財産はどうなるのですか。遠い親戚とかが相続するのでしょうか。

 本事例は相続人となり得る人(推定相続人)がいません。そのような場合、その人が亡くなると、「相続人の不存在」として、民法951条~959条の規定に従って処理されることになります。

 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人となります。そして、この場合、家庭裁判所は、利害関係人または検察官の請求によって相続財産管理人を選任します。

 相続財産管理人は、相続債権者及び受遺者に対する弁済、相続人の捜索の公告などを行います。そして、処分されずに残った相続財産は、最終的には国庫に帰属することとなります。なお、相続財産管理人の選任は家庭裁判所の職権(審判)で行われます。実務上、相続財産管理人は、裁判所が作成している管理人候補者のリストから第三者(弁護士)が選任されており、申立人の希望が通るわけではありません。審判の申立書にも、候補者を記載する欄はありません。

 相続財産管理人選任の申立てができるのは「利害関係人」ですが、具体的には、特別縁故者、相続債権者、事務管理者(現に相続財産を管理していたり、葬儀費用を立て替えたりした者)、成年後見人であった者、受遺者などがこれに当たります。

 相続人がいないことが確定したとき、特別縁故者は相続財産の分与を請求することができます。特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者(内縁の妻など)」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」です。家庭裁判所は、相当と認めるとき、相続財産の全部または一部を特別縁故者に与えることができるものとされています。つまり、特別縁故者と認められるかどうか、認められたときにどの程度の財産を分与してもらえるかは、家庭裁判所の裁量にゆだねられています。

 本事例のように推定相続人がいない方の場合、遺言を残しておくことを強くおすすめします。内縁の配偶者や親しい友人に遺産を渡したいという場合、遺言にその旨を記しておくべきです。特別縁故者として認められるかどうかは家庭裁判所の判断次第で、確実に認められる保証はないからです。

 そして、遺言執行者として弁護士、司法書士、行政書士などの専門職を指定しておくと、遺言の内容を確実かつスムーズに実行してもらうことができます。