私には娘が3人いますが、長女が病気で余命わずかという宣告を受けています。長女が私より先に亡くなった場合、私からの相続分はどうなるのでしょうか。長女には夫と子供2人がいます。

 被相続人の子が相続の開始以前に死亡すると、その子(被相続人の孫)が相続人となります。これを代襲相続といい、関係を図示すると下のようになります。

 本人(被相続人)―長女(被代襲者)―長女の子(代襲者)

 代襲相続は、被相続人の子が相続の開始以前に死亡した場合だけでなく、被相続人の子が欠格事由に該当し、もしくは廃除によって相続権を失った場合にも適用されます。これに対し、被相続人の子が相続を放棄したときは、代襲相続は適用されません。なお、代襲相続の場合、長女の夫は相続人にはなりません。

 代襲相続は、代襲者が相続の開始以前に死亡し、または欠格事由に該当し、もしくは廃除によって代襲相続権を失った場合についても適用があります。長女に加えて長女の子も先に亡くなっていて、代襲者である長女の子に子がいれば(本人から見てひ孫に当たります)、その子が相続人となるわけです。

 理屈の上では、直系卑属に係る代襲相続は何代でも続いていきます(再代襲といいます)。もっとも、現実に起こり得るのは、孫が祖父母の相続人となるケースぐらいでしょう。

 代襲相続は、兄弟姉妹についても適用があります。

 兄弟姉妹が相続人となる場合で、その兄弟姉妹が相続の開始以前に亡くなっているとき、その兄弟姉妹の子(被相続人のおい・めい)が代襲して相続人となります。兄弟姉妹が欠格事由に該当し、もしくは廃除によって相続権を失った場合も同様です。

 ただし、兄弟姉妹に関しては再代襲はありません。兄弟姉妹に加えてその子(おい・めい)が先に亡くなっていれば、そのおい・めいに子がいたとしても、その子は相続人となりません。

 子供のいない夫婦で、推定相続人が配偶者と兄弟姉妹となる場合、兄弟姉妹について代襲相続が発生していると、残された配偶者は、夫もしくは妻のおい・めいと遺産分割協議をする必要が生じます。場合によっては、それまでほとんど関わりを持たなかった相手と話し合いをしなければならないわけで、心理的に大きな負担となります。主立った遺産が不動産のみという場合、遺産分割協議の結果次第ではその不動産を処分せざるを得なくなり、残された配偶者の生活が不安定になるリスクもあります(注参照)。

 お子様のいらっしゃらないご夫婦におかれては、このようなリスクを回避するためにも、遺言を残されることを強くおすすめします。

(注)2018年(平成30年)3月、配偶者の居住権の保護等を内容とする民法の改正案が国会に提出され、審議中です。