後見人を長男に代わってもらいたいと思っているのですが、認められるでしょうか。

 成年後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができます。「正当な事由がある」と認められる例としては、後見人が転勤で遠隔地へ引っ越さなければならなくなった場合や、高齢や病気のために後見人としての職務遂行に支障が生じた場合があります。

 後見人が辞任したときは、他に後見人がいる場合を除き、速やかに新たな後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。

 長男に後見人を引き継ぎたいということであれば、申立ての書面に長男を候補者として記載し、家庭裁判所に提出することになります。

 しかし、誰を後見人にするかは家庭裁判所が職権で決めることですから、希望どおりに長男が選任されるとは限らず、第三者が選任されることもあり得ます。特にそれまでの財産管理などに不適切な点があった場合は、弁護士や司法書士などが後任の後見人に選ばれる可能性が高くなるでしょう。

 親族に後見人を引き継ぎたいとお考えのときは、家庭裁判所に申立てをする前に、専門職に相談されることをおすすめします。専門職にそれまでの財産管理等の状況を診断してもらい、親族への交代は難しいと思われる場合には、初めから第三者(専門職)を候補者として申立てを行うことも考えられます。そうすれば、見ず知らずの人がいきなり後見人に選任される事態は避けることができます。

執筆者
行政書士・社会福祉士 稲吉 務
(足立区の専門職成年後見人)