成年後見制度を利用している本人が亡くなった場合、後見人の仕事はどこで終わりになるのでしょうか。

 制度上は、本人の死亡と同時に後見自体が終了します。後見人は、速やかに家庭裁判所へ報告するとともに、後見終了登記の申請を行います。そして、管理していた本人の財産は相続人へ引き継ぐことになります。

 親族後見で後見人が相続人でもある場合や、第三者後見であっても本人の身近に相続人がいれば、相続人への引き継ぎはスムーズに行われるでしょう。

 本人に相続人がいない場合や、いても疎遠な場合は問題があります。

 後見人は、死亡届を出すことはできますが、それ以上のことをする法的な権限はありません。しかしながら、病院からの遺体の引き取り、葬儀、埋葬を引き受けてくれる親族などが見つからず、後見人が行わざるを得ないこともあります。このような事態に立ち至ったときは、家庭裁判所もしくは監督人に相談し、指示を仰ぎながら事務処理を進めていくのがよいでしょう。

 なお、平成28年10月に施行された「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律」(平成28年法律第27号)により、成年後見人は必要があるときは、本人の死亡後も、個々の相続財産の保存に必要な行為、弁済期が到来した債務の弁済、火葬または埋葬に関する契約の締結等といった一定の範囲の事務を行うことができるようになりました。

執筆者
行政書士・社会福祉士 稲吉 務
(足立区の専門職成年後見人)