被後見人の依頼で後見人が行ったことが家族の意向とは異なる場合、どうなりますか。

 これまでご説明してきたとおり、成年後見人の務めは本人を支援することであり、本人の意思は最大限に尊重しなければなりません。本人の意向と家族の意向が相反する場合、成年後見人は一義的には本人の意向を優先することになります。

 例えば、元気なころは旅行好きだった認知症の被後見人が「また旅行をしたい」と希望した場合、後見人としては、家族が反対したとしても、まずは被後見人の希望を実現する方法を模索することになります。

 もちろん、さまざまな要素を考慮した結果、旅行はあきらめざるを得ないケースもあり得ます。要は、判断能力が低下している人の意思表示だからといって、初めから取り合わないような姿勢はとるべきではないし、家族の意向に優先して尊重されるべきものであるということです。

執筆者
行政書士・社会福祉士 稲吉 務
(足立区の専門職成年後見人)