成年後見制度を利用している人が不必要な契約をしてしまった場合取り消せるというのは本当ですか。

 3-20でご説明したとおり、成年後見人・保佐人・補助人にはそれぞれの権限に応じた取消権が与えられています。

 ただし、一たん結んだ契約を取り消すのは、相手方にとっては不利益になることですから、成年被後見人・被保佐人・被補助人(一括りに「制限行為能力者」といいます)と取引(契約)をした相手方を保護する仕組みもあります。

 具体的には、制限行為能力者と取引をした相手方は、その成年後見人・保佐人・補助人に対し、その権限内の行為について1カ月以上の期間を定めて、当該取引を追認するかどうか確答するように催告することができます。成年後見人・保佐人・補助人が期間内に確答を発しないときは、当該取引を追認したものとみなされます。

 また、相手方は、被保佐人または被補助人に対して1カ月以上の期間を定めて、その保佐人または補助人の追認を得るように催告をすることができます。被保佐人・被補助人が期間内に追認を得た旨の通知を発しないときは、当該取引を取り消したものとみなされます。

 ただし、制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことはできません。

執筆者
行政書士・社会福祉士 稲吉 務
(足立区の専門職成年後見人)