成年後見人に選ばれるのはどのような人ですか。

 成年後見制度が始まった当初は、本人の親族(配偶者や子供、兄弟姉妹など)が成年後見人になることが多かったのですが、近年は弁護士、司法書士、社会福祉士、行政書士など親族以外の第三者が成年後見人に選任されるケースが増えています。

 最高裁判所がまとめた「成年後見関係事件の概況(平成28年1月~12月)」によると、平成28年中に親族以外の第三者が成年後見人に選任されたケースは全体の約71.9%に達しました。親族が選任されるケースを大きく上回り、全体の7割強となっています。

 第三者後見人(法人後見を含む)の内訳を見ると、司法書士が約37.7%、弁護士が約32.2%、社会福祉士が約16.0%、行政書士が約3.2%、社会福祉協議会が約3.6%、その他の法人が約5.1%となっています。

 そして、家庭裁判所の側でも、成年後見人の選任に当たり、第三者の関与を強化する運用を始めています。

 東京家裁では、本人が一定規模以上の流動資産(預貯金や有価証券)を所有している場合など、本人の利益を保護する必要性が高いと判断されるときには、親族後見人を裁判所が直接監督するという従来多かった形態は原則としてとらず、(1)初めから第三者を後見人に選任する、(2)親族後見人に第三者の後見監督人をつける、(3)第三者を含めた複数後見人とする――のいずれかを選択し、何らかの形で第三者を関与させるか、もしくは後見制度支援信託を利用する運用を行っています。

 親族後見人による不正が後を絶たず、裁判所としても相当の危機感を持って取り組んでいるようです。これからは第三者後見人の果たす役割がますます大きくなるものと思われます。

執筆者
行政書士・社会福祉士 稲吉 務
(足立区の専門職成年後見人)