自筆証書遺言の要件緩和と保管制度

1月16日に法制審議会民法(相続関係)部会が開催され、「民法(相続関係)等の改正に関する要綱案」が取りまとめられました。

内容は多岐にわたりますが、今回は自筆証書遺言の要件緩和と保管制度について解説します。

まず要件緩和についてですが、自筆証書遺言は「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」とされているところ(968条1項)、これに「相続財産の全部または一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない」という例外規定を設けようというものです。

これが認められれば、本文についてはこれまでどおり自書しなければならないものの、財産の目録についてはパソコンで作成して印刷したものでもよいことになりますから、新規に作成することも、内容を修正することも楽にできるようになります。自筆証書遺言のハードルを大きく下げる制度改正と言えるでしょう。

次に保管制度ですが、遺言者は法務局に自筆証書遺言の保管を申請することができ、法務局は遺言者の死後、その相続人、受遺者、遺言執行者の請求により、当該遺言書を閲覧させたり写しを交付するというものです。公正証書遺言における原本の保管、謄本の交付と似た仕組みと言えるでしょう。

私が注目しているのは、この制度により法務局に保管された自筆証書遺言については検認を要しないとされていることです。検認が不要となることで、自筆証書遺言のハードルを下げる効果をもたらすと思われます。

一方、要綱案では検認に代わる措置として「遺言書の保管の申請がされた際には、法務局の事務官が、当該遺言の民法第968条の定める方式への適合性を外形的に確認」することとされているのですが、「方式への適合性を外形的に確認」することが、内容についてもお墨付きを得たものと誤解され、トラブルの火種となる可能性はあります。現に日弁連は、この保管制度について「利用者が、公的機関に遺言書を預けたことで遺言書自体が有効なものと認められたと誤解するなど、本保管制度に対する誤解や過度の期待を持つ可能性を否定できない」と指摘しています(「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」に対する意見書31ページ)。

 

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